OTCの薬理学 

市販薬でより良い医療を提供出来るように

風邪薬の選び方 その2

前回は何となくの全体感を書いたので今回は少し成分に関して。

基本的には成人向けに対して書いていきます。漢方はまたそのうち。

 ※殆どの成分で酸塩基は省略してます

 

 

<解熱鎮痛に関して>

アセトアミノフェン

市販だと1日量が900mgのものがほとんどです。これ以上のものは無く、これ以下のものはありますがあまりメジャーなものではなく薬局でなかなか見れないと思います(もちろん子供向けはもっと少ないですが)。タイレノールアセトアミノフェンの単剤)も300mgです。

ちなみに子供向けの解熱鎮痛薬は市販ではアセトアミノフェンくらいでしょか。イブプロフェン等々は15歳以上での服用になっているので使えません。おそらくインフルエンザなので服用してしまうリスクを懸念してなんだと思います。

 

イブプロフェン

調剤ではそこまでメジャーではないかもしれませんが、OTCでは目にするほとんどの薬がイブプロフェンです。1日量は400~600mgです。600mgは比較的最近の製品が採用してます。エスタックイブファインEX、パブロンゴールドPro、コルゲンコーワTXαあたりくらいでしょうか。上でも書きましたが、15歳以上の方しか使えません。子供には使えないので要注意。

ちなみにイブプロフェンが含有されているとセルフメディケーション税制の対象商品になります。

 

・トラネキサム酸

喉の痛み炎症効くとされていて、調剤のほうでもよく見る薬なのではないでしょうか。1日量は750mgが限界のようです。ぺラックの愛好家がいることからある程度の効果はあるのでしょうか。ただ海外だとほとんどその用途で使われていないようですが。

 

・ロキソプロフェン

風邪薬というよりも喉の痛みに対しての商品でしょうか。ロキソニンシリーズはもちろんですが、コルゲンコーワLXα(トラネキサム酸が追加されている)も対象製品です。ただ総合感冒薬としての製品は今のことろありません。2類医薬品になったらいろんなことろから出てきそうな感じはありますが。

 

<鼻水鼻づまりに関して>

風邪の鼻水鼻づまりに対して、単剤では殆ど効かないコクランで報告されています。第2世代抗Hはほぼ無効、第1世代で少し効くかなといった程度でうっ血除去薬(プソイドエフェドリン等々)と一緒に服用しないとダメなようです。幸いにもほとんどの風邪薬にはエフェドリン系が入っているので効かないということはなさそうです(ただ含有しているメチルエフェドリンは血管収縮作用が弱いとされているのそこまで効かないということはなさそうですが)。

 

・クロルフェニラミン

d体のみのものとラセミ体のものとどちらも使われていますが、量が調整されているのでどちらを選んでもそこまで効果の差はないと思います。ただ眠気に関してd体、l体どちらも有しているのでラセミ体のほうが眠気が強いことが予想されます。

 

 

・プソイドエフェドリン

うっ血除去薬にあたるところです。調剤だとディレグラとかでしょうか。

今のことろ第1世代との組み合わせしかないようです。鼻水鼻づまりを強く訴える方には、主薬の抗ヒスタミンに注目するのではなくプソイドエフェドリンを含有しているか否かに着目するのがいいと思います。

 

ベラドンナアルカロイド

鼻水鼻づまりを売りにしている風邪薬に入っていることが多い成分で、他の抗ヒスタミン薬が一緒に入っていることがほとんどです。その名の通り抗コリン作用で副交感神経を抑制し鼻水等の症状を抑えるようですが同時に眠気も強くなります。よっぽどひどい場合にはいいのかもしれません。

 

<咳に関して>

・メチルエフェドリン

・デキストロメトルファン

・ジヒドロコデイン

 

最近の薬は大体デキストロメトルファンとメチルエフェドリンの組み合わせな気がします。ジヒドロコデインは少し古い薬か咳止めだけの薬以外なかなか見ない気がします。

小児に過剰投与してしまった影響でしょうか、コデイン含有の製品は12歳以下は使えないことになり去年あたりからいろいろと商品にも変化が出てきました。

 

<去痰に関して>

・アンブロキソール

・カルボシステイン

 

10~20年位前にどちらもスイッチOTCになりました。アンブロキソールは医療用と同じ1日量45mg、カルボシステインは750mgまでになります。パブロンProにはどちらも含まれているので、この辺を強く訴える方にはいいかもしれません。

一応この2成分だけの商品もあったりします。

 

<その他>

・無水カフェイン

眠気防止でしょうか。ちょいちょい入っているものがあります。使えば一時的に覚醒するかもしれませんが、治っているわけではないので要注意。結構な数の商品に入っています。

 

・ビタミン

BかCくらいだと思いますが入っている商品もあります。風邪の時は消耗しやすいなんてことがよく記載されていますが、何に効くのかどうかよくわかりません。

 

 

他にもありますが大体がこの辺です。大体のものが調剤でも使うものなので、慣れればそれほど苦にはならないと思います。ただどれのほうが優れいているかはなかなか難しいです。大体が似たような構成をしているので。。。

構成物の微妙な違い(意外とカルボシステインが含有されてないものがある)とイブプロフェンの含有量、ベラドンナアルカロイドが追加で含有されているか、そんなところで選んでいくのがいいのではないか思います。

風邪薬の選び方 その1

どれを選んでも問題ないと思います!
なんて言うのは無責任過ぎるので場合分けをしてみました。大体この辺を頭に入れておけば大体には対応できるのではないでしょうか。


〈インフルエンザぽい〉
大人の場合はイブプロフェンを使っても問題になる事は少ないですが、リスク管理的にも避けるのが無難でしょう。こいつよく知ってるとか思ってもらえるかもしれませんし。漢方で使うとすれば麻黄湯。インフルエンザに効果のある漢方です。一説によるとタミフル等の抗インフルエンザ薬とそれほど効果が変わらないとか。正直、インフルエンザシーズンに風邪っぽい、インフルエンザっぽいってだけで病院にいくのはリスクが高いのでやめた方がいいような気がします


〈喉が痛くて熱っぽい〉
風邪薬ではなく解熱鎮痛薬を使いましょう。
風邪薬を使うと眠気、口渇が現れる可能性が高いです。
ロキソニン、トラネキサム酸(ペラック®)あたりが適任でしょうか。両方が組み合わさったコルゲンコーワLXαなるものもあります。
熱狂的なロキソニンファン、ペラックファンがいるのでそういった人には薦めやすいと思います。


〈持病がある〉
胃潰瘍緑内障・排尿障害などなど。
前者はNSAIDs、後者2つは抗コリン薬が禁忌になります。だいたいどっちも入ってます。
胃潰瘍等ならアセトアミノフェン含有のものでいいと思いますが、緑内障等だと大半の風邪薬が使えなくなります。漢方を進めるのも手かと思います。


〈運転をする〉
上でも述べましたが、風邪薬は眠気を催す可能性が高いのでやめておいたほうが無難です。一応どれにも眠気対策でカフェインが入ってますが。使うのであれば眠くならないと書いてある解熱鎮痛薬、葛根湯等の漢方(葛根湯が風邪に良いかどうかは別として)を進めるのが良いかと思います。


〈鼻水がやばい〉
大抵の風邪薬には第1世代の抗ヒスタミン薬が使われてます。鼻水に特化しているものだとベラドンナアルカロイド等が入っていて、より鼻炎に強く働きかけるような作りになってます。
眠気が嫌だからといって第2世代の抗ヒスタミン薬を使うと、効果が出ないとこが多いようです。眠気が気になる場合は小青龍湯の方がいいと思われます。


〈咳が酷い〉
ジヒドロコデインが入ったものがいいと思います。ただし12歳未満は使えません。
小児にはベポラップだったりハチミツだったりのほうが良いようです。


〈なんか風邪っぽい〉
それなりの割合でこう言った方がいます。そして症状は無かったりと薬の必要性を感じないのですが、何か買いたいと。
正解が無い問題ですが、どんな症状に悩まされることが多いか等の問診をし選んでいくのが無難だと思います。

はじめに

私は薬剤師として働いています。その中で思うことは、調剤はできるが市販薬(OTC)に関しては良くわからないといった薬剤師を多く見てきました。またこの症状にはどのような薬を使うべきか?といった質問に対してまともに答えられない薬剤師もそこそこいたりします。

 

国としてはセルフメディケーションを推進しているのに、一番薬のことを知ってそうな薬剤師がOTCのことをほとんど知らないのが現状です。

普通に調剤薬局で勤務している分には、OTCに関して質問されることがそれほどなく、大学でもOTCに関してはほとんど学びません。

 

そういった状況を少しでも改善したいと思い本ブログを立ち上げました。