市販の鉄剤について
意外かもしれませんが、OTCにも鉄剤があります。
そして健康食品といわれるカテゴリーのものにも含有しているものもあります。
ぱっと思いつくとこを挙げてみました。
商品名 | 区分 | Fe | 鉄として |
ポポンS+ | OTC | フマル酸第一鉄 | 10mg |
ファイチ | OTC | 溶性ピロリン酸第二鉄 | 10mg |
マチスゲン | OTC | 溶性ピロリン酸第二鉄 | 10mg |
フェロ・グラデュメット | 医療用医薬品 | 乾燥硫酸鉄 | 105mg/錠 |
フェルム | 医療用医薬品 | フマル酸第一鉄 | 100mg/錠 |
フェロミア | 医療用医薬品 | クエン酸第一鉄 | 50mg/錠 |
インクレミン | 医療用医薬品 | 溶性ピロリン酸第二鉄 | 50mg/mL |
ディナチュラ | 食品 | ヘム鉄 | 3mg |
DHCヘム鉄 | 食品 | ヘム鉄 | 10mg |
『鉄として』は1日の摂取量を示しました。
赤字が医療用です。用法は色々あるので1錠ごと、1mLごとの摂取量で示しました。
比べてみるとわかりますが、OTCと健康食品はそれほど差がなさそうです。それと比較して医療用はその10倍近く含有されています。一応1日50~100mgが摂取できればいいようですが、OTC等ではそこまで摂取することもできないようです。
医療用ですら数か月摂取が必要なので、OTCだけで鉄欠乏貧血を改善させるのは難しそうな気がします。買ってもらうのはいいかと思いますが、受診勧奨はセットで行いたいものです。
花粉症治療薬の選び方 その3(点眼薬)
今回は点眼薬で。結構色々ありますが、カテゴリー分けするとそんなに大したことない気がします。
有効成分で分類すると(カウンターイオンは省略)
他にも成分はありますが
①クロルフェニラミン(0.01%)
②クロルフェニラミン(0.01%)+充血除去薬
③クロルフェニラミン(0.03%)
④クロルフェニラミン(0.03%)+充血除去薬
⑤クロルフェニラミン(0.015%)+クロモグリク酸
⑥クロルフェニラミン(0.03%)+クロモグリク酸
⑦クロルフェニラミン(0.015%)+クロモグリク酸+プラノプロフェン
⑧クロルフェニラミン(0.03%)+クロモグリク酸+プラノプロフェン
⑨ケトチフェン
⑩アシタザノラスト
⑪ペミロラスト
⑫トラニラスト
①~⑥は量的なこと以外はなかなか差別化が難しいですね。充血除去薬は悪い意味で差別化になるかもしれませんが(連用で悪化の可能性)。
特に⑤⑥に関しては、クロモグリク酸の効果発現が遅く効果も強くないので他も物と差を感じられないかもしれません。あとクロモグリク酸が追加されると点鼻薬との併用で運転が禁忌になるようです(成分の重複のせいで眠気増強か?)。
⑩⑪⑫の、アシタザノラスト、ペミロラスト、トラニラストは、クロモグリク酸と同程度らしいので花粉症にはそこまで期待できないのかもしれません。ただNGが少ないので比較的使いやすい薬なきはしますが。
⑦⑧はNSAIDsのプラノプロフェンが含有されているせいか、妊婦・授乳婦・7歳未満には禁忌になってます。高価格帯の商品に含有されているので、症状がつらいからと言って安易に薦めるのは危険かもしれません。
⑨のケトチフェンは作用時間が長い第二世代です。ほかのものより持続性は期待できそうです。
正直どれを選べばいいかはっきりとしたことはわかりませんが、、、
・基礎疾患(緑内障等)がある
似たような配合にはなってても禁忌だったりそうでなかったりするみたいなので何とも言えませんが。。ケトチフェン含有の商品を出すのが無難なのではないでしょうか。
・効果が強いものがいい
なんだかんだ効果の主体はクロルフェニラミンなので一番濃度が濃いのがいいでしょう。他の成分はあった方がいいのでしょうが、価格が跳ね上がるので無くてもいいと思います。
・コンタクトレンズを使用している
意外と使えるものがありません。この辺とかでしょうか。
ロートアルガード コンタクトa | ロート製薬: 商品情報サイト
説明するまでもないですが防腐剤の有無ですね。
今説明できるのはこんなところです。今後可能なら修正をしていきます。
今日のOTC薬 第4版
去年の4月ころ発売でしたが、いまさらになって買いました。
第3版は持ってましたが、2015年発売だったので色々と収載されてない薬があったり資料としてはいまいちでした。最近はOTCにかかわることも減ってきたので参考程度に買ってみました。
簡単に紹介してみたいと思います。
患者(お客)に質問されてから薬の選択までを簡単にまとめてます。経験のない方には非常に役に立つ指標なのではないでしょうか。ただ私的には非常に見ずらいです。はい・いいえとそれ以外の矢印があるのですが、はい以外は大体が同じ矢印を説明なく使っていることが多く、たまに悩みます。
今回から登場した表です。
例えば鎮痛薬なら、鎮静薬有り無しで分けて、その分けたものを主薬で分類してます。ざっくり把握するには非常にいいものだと思います。
ただこれを丸々覚えるのではなく、自分の店にあるものを同じように分類するのに活用するのがいいと思います。
・解説
少ないページでまとまっているので、これだけでも覚えれば困ることは少ないんじゃないでしょうか。
・便覧
商品を比較するのに適した表になってます。見やすくていいと思います。
・妊婦等に関して
3版では、受診が基本だが患者が要望するのであれば〇〇〇を含有するものを販売する、などといった文言があったが今回からそれはなくなったり残ってたりと。ただ1つか2つの成分を取り上げているだけなので、それ以外の成分に関しても考える必要があります。しっかり各成分のリスクを把握していないうちは妊婦・授乳婦への販売は避けた方が無難です(是非次回に向けて勉強してください)。
下手な参考書を買うよりも有益だと思います。
※いうまでもないですが、執筆もしていなければ製本にも関わっていないのでどれだけ売れても私に臨時収入はありません。
風邪薬の比較 その1
どの分野もそうだと思いますが、比較をすることでその物の有用性が明らかになるものだと思います。OTCに関しても同じことがいえると思います。
何を基準にすべきかなかなか難しいですが、、、
医療用医薬品で風邪の処方に近いって考えるとパブロンエースプロでしょうか(私の主観です。)。
1回量(3錠)
イブプロフェン | 200mg |
L-カルボシステイン | 250mg |
アンブロキソール塩酸塩 | 15mg |
ジヒドロコデインリン酸塩 | 8mg |
dl-メチルエフェドリン塩酸塩 | 20mg |
クロルフェニラミンマレイン酸塩 | 2.5mg |
リボフラビン(ビタミンB2) | 4mg |
毎食後に服用
・解熱鎮痛作用
イブプロフェンは風邪でそこまで使用されませんが、医療用と同等の量が使われています。医療用で多いのはアセトアミノフェンかロキソニンでしょうか。
絶対的な比較は難しいですが、解熱鎮痛作用は医療用医薬品と同等なのではないでしょうか。
・去痰作用
L-カルボシステインとアンブロキソールはどちらもよく処方箋でみる内容だと思います。アンブロキソールは医療用と同等ですが、L-カルボシステインは500mgがよくつかわれる気がしますが、この商品では250mgです。この点に関しては少し劣るところでしょうか。添付文書だと250mgのAUCは500mgの半分以下になります。効果がどの程度になるのか何とも言えませんが、粘液構成成分正常化作用に関しては劣ることになりそうです。
http://database.japic.or.jp/pdf/newPINS/00062608.pdf
・鎮咳作用
風邪薬のほとんどがジヒドロコデインリン酸塩(1日量24mg)を使用しておりますが、処方箋で見るのは副作用の少ないデキストロメトルファンな気がします。IFではジヒドロコデイン(15mg)とデキストロメトルファン(10mg or 20mg)は同等とされています。容量のことを考えると、医療用の8割くらいだと思うので若干弱いくらいでしょうか。ただ試験が60年くらい前の結果なので信用できるかわかりませんが(昔は色々といい加減だった)。
ただそれを補うかのようにメチルエフェドリンが含有されています。なにかデータがあるわけではないですが、鎮咳作用も医療用と比べてそう劣るものではないように思えます。
・抗アレルギー作用
OTCのほとんどはdー体、lー体の混合物を使用してますが、医療用は眠気の少なく作用がl-体の2倍くらい強いとされているdー体を使用してます。2mgを1~4回なので作用は医療用の方が優秀だと思われますが、風邪の鼻水に関してはうっ血除去薬を使用しないとほとんど効果がないとされているので、実際にはほとんど変わらない(効かない?)可能性があります。
以上から、効果に関しては医療用のものと殆ど変わらないように思われます。
特に基礎疾患がない方で、仕事等で無理をされなければならない方には適する風邪薬なのではないでしょうか。その分値段は高めですが。。
花粉症治療薬の選び方 その2(点鼻薬)
前回は内服だったので今回は点鼻薬を
OTCだとざっくり4種類です。他にもちょいちょい何かが入っていますが。
①抗ヒスタミン薬(第一世代)+血管収縮薬
②抗ヒスタミン薬(第二世代)
③抗ヒスタミン薬(第一世代)+血管収縮薬+クロモグリク酸ナトリウム
それぞれ値段の目安が
①:1000円未満(ナザールなど)
②:1000円くらい(ザジテン)
③:1500円くらい(AGノーズ)
④:1500~2000円(ストナ、AGノーズなどの)
と結構わかりやすい価格帯になってます
対比形式でやってみます
②、④ vs ①、③
①、③は緑内障等々には使わない方がベターです。悪化する危険があります。
抗コリン作用によるものですが、OTCは意外と抗コリン作用がある商品があります。一応禁忌ではないですが、といったところ。値段は変わってきますが他にも選択肢があるのであえて①、③を選ぶ必要はないと思います。
① vs ③
クロモグリク酸が入っているかいないかだけの違いです。作用発現までに1週間以上かかるようなので③を選ぶ理由が思いつきません。長期投与が禁忌ですしね。下記リンクでもある通り、長期投与で悪化します。
「市販の点鼻薬」で鼻炎!?|病気について|医療法人はかたみち はかたみち耳鼻咽喉科|福岡県久留米市
④ vs ①、②、③
ステロイドの点鼻は他の点鼻薬よりも有効性であることが示されています。鼻の症状に限って言えば内服よりも効果が高いとか。
物によって使用できる期間が違いますがナザールARなら3か月までは使えます。
3ヵ月使ってまだ症状がおさまらないときはどうしたらよいですか?|眠くならない鼻炎薬ナザールαAR0.1%(佐藤製薬)
1シーズン(春)カバーできそうです。ちゃんと使うと3週間くらいしか持ちませんので何回か買う必要がありますが。
値段は一番高いラインナップになりますが、市販の点鼻薬はステロイドのものを使うのがベストだと考えられます。
漢方とそのエビデンス その1(風邪関係)
漢方は数千年前から使われており、だから臨良試験をしてなくとも医薬品として扱って問題ない、なんてことを大学の授業で聞いた記憶があります(ややうろ覚え)。あの頃は何とも思いませんでしたが、今ではあまりのエビデンスの無さに思うことも。
今回は市販で手に入る漢方薬をエビデンスと共に紹介したいと思います。ただ市販の漢方は満量処方になっているものが多くなく、たとえ信頼できるエビデンスがあったとしてもそれをそのまま当てはめるのが難しいものもあります。
では、それも踏まえて。今回は風邪関係に絞って紹介します。
<葛根湯>
よく市販だと風邪のひきはじめにとかで売り出されていますが、それらしいエビデンスを見つけることは出来ませんでした。むしろひきはじめから使っても総合感冒薬(パブロン)とそんなに差はないとか。
葛根湯はメジャーな漢方なせいか様々な量での製品があります。
満量処方の1/2、3/4は記憶にありますが、ほかにもあったような気がします。勿論満量処方もあります。
風邪の諸症状にも肩こりにも適応があることはありますがそれらしいエビデンスがなく、私は積極的に勧めません。
<小青龍湯>
調剤でも花粉の時期に大量に処方されますね。葛根湯と違って色々としっかりとしたエビデンスをもっていて非常に優秀な漢方のイメージです。漢方でありながら証を気にしないで使えますし。
http://www.jsom.or.jp/medical/ebm/er/pdf/950007.pdf
満量処方、1/2(錠剤)、3/4があります。まあ満量処方のものを使用するのが無難でしょうね。
花粉症で眠気が気になる方には、小青竜湯を選択するのもいいともいます。
<麦門冬湯>
これも小青竜湯と同様有用な漢方だと考えてます。
例数は少ないですが、RCTでデキストロメトルファンと比べて同等以上の結果を出してます。デキストロメトルファンを使った咳止めは色々ありますが、効かなかったときなどは麦門冬湯を奨めるのもありだと思います。
かぜ症候群後咳嗽に対する麦門冬湯と臭化水素酸デキストロメトルファンの効果の比較 (パイロット試験)
これも満量処方、3/4があります。
<麻黄湯>
インフルエンザに使える漢方です。一応タミフル等と比較して非劣勢を示したようです。最近日経DIで青木氏が解説していたのでそちらをご覧いただければいいかと思います(手抜き)。
勿論、試験は満量処方で実施をしているので、薦めるのもの満量処方がいいと思います。
葛根湯はともかく他のドラックストアでよく見る漢方は、それぞれの症状に対して十分効いてくれそうです。ドラックストアでは使える薬の種類が少ないので、使える手段を減らさないためにも有用な漢方は把握しておくべきだと思います。
花粉症治療薬の選び方 その1(内服)
近年いろなものがスイッチしたおかげで、病院に行く必要がなくなるくらいのラインナップになってきてます。風邪の鼻水鼻づまりに第2世代単独では効果がありませんが、花粉等のアレルギーによるものであればしっかりと効いてくれます。
いくつかカテゴリーを作って紹介したいと思います。
まずOTCで存在する第2世代は
・アレグラ(フェキソフェナジン)
・アレジオン(エピナスチン)
・クラリチン(ロラタジン)
・ゼスラン(メキタジン)
・ジルテック(セチリジン)
です。意外と多いと思いませんか?愛好家(?)の多いザイザルはありませんが、これらと点鼻薬があれば、花粉症に関しては耳鼻科にも負けないだけの薬物治療が薬局でもできると思いませんか?
OTCがそろってきたので、風邪とか花粉症とか軽い皮膚疾患に関しては病院にかかるのと同等の治療が受けられると私は考えてます(それなりに知っている薬剤師がいれば)。
で、しれっとセチリジンがあったりするんです。調剤だとザイザルのせいでほとんど出ることがない気がしますが。ただ臨床試験結果を見ると、
レボセチリジン⇒1292例中、傾眠が67例(5.2%)(海外)
セチリジン ⇒1396例中、傾眠が84例(6.0%)(国内)
http://file:///C:/Users/shift/Downloads/340278_4490028Q1028_1_010_1F.pdf
とほぼ差がないんじゃないかといった感じです。肝心の鼻炎に対する効果もレボセチリジンはセチリジンと同等と言ってますし(IF、P.18)、ザイザルの方が優れているわけではないんだと思います。
では分類に戻ります。
<運転する>
・アレグラFX(アレルビ、フェキソフェナジンなど)
・アレグラFXジュニア
・小青龍湯
運転が禁止されてないのはこれらだけですね。他は全部禁止です。
<1回の服用がいい>
・セチリジン(コンタックやストナの一部商品で)
・アレジオン
意外と需要が多いポイントだったりします。
<妊婦・授乳婦>
妊婦は検診があるので処方してもらえる機会はそれなりにあると思いますが、授乳婦になると病院まで行くのが少し足が遠のくのかなと思います。なので授乳婦からの相談は薬局でもそこそこあります。
妊婦のほうは病院によって結構方針が違うような気がするので、勝手にやると文句を言われるかもしれませんが。基本的にはクラリチン以外は販売すべきではないと思います。FADのリスク分類とオーストラリアン分類の結果を鑑みると、一番はポララミン(d-クロルフェニラミン)で二番がクラリチンです。ただOTCでd-クロルフェニラミンの単独での製品はほとんどなく色々入っているので結果をそのまま利用するのは少し雑すぎる気がします(そして単独での商品を見たことない)。なので妊婦に関しては次点のクラリチンがベストだと思われます。カフェインも入ってないしね。
授乳婦の場合は、クラリチンかアレグラが問題ないとされています。
授乳中に安全に使用できると考えられる薬 - 薬効順 - | 国立成育医療研究センター
ジフェンヒドラミンも大丈夫そうですが、鼻炎の薬でこの成分を含有している商品は無さそうであるのは睡眠改善薬とかとかになります。変に冒険せずクラリチンかアレグラを進めるのがいいかと思います。
ただどちらも一般成人よりもリスクの高い患者になるので、よく問診をしてからの販売でお願いします。
<アレグラもアレジオンも効かない>
結構な頻度でいます。セチリジンを試すのはありかと思いますが、第1世代に変えるほうがいい結果を出すのではないかと思います。カフェインが含有されているので眠気に関しては医療用よりもかなり軽減されていると思いますし(それでも運転は禁止)。ただし口渇には注意。
最後にですが、タリオンもそのうち商品化されそうです。
【薬食審要指導・一般薬部会】タリオンとクラリチン、初のスイッチ化了承‐アレルギー性疾患治療薬が3件 : 薬事日報ウェブサイト
もう2年が経っているのですが、タリオンは噂を聞きませんね。この時期に販売されないってことは今シーズンの販売は無さそうです。